不意打ちの禁止




私は一人暮らしで、家で食事をするときは自炊をしているのですが、
たまにご飯を炊くのが(あるいは炊けるまでの時間を待つのが)面倒なときは、ご飯の代わりに餅を食べることもあります。
このため、冷蔵庫には常時、切餅が保存されています。

パンでもいいんでしょうけど、やっぱり日本人なら米が食べたいじゃないですか。


以前話題になった切餅事件(越後製菓v.s 佐藤食品工業)について、先日、知財高裁の中間判決が出ていましたね。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110908101558.pdf

以下、問題となった特許発明の請求項です。

「【請求項1】
A: 焼き網に載置して焼き上げて食する輪郭形状が方形の小片餅体である切餅の
B: 載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に,この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け,
C: この切り込み部又は溝部は,この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に一周連続させて角環状とした若しくは前記立直側面である側周表面の対向二側面に形成した切り込み部又は溝部として,
D: 焼き上げるに際して前記切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり,最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制するように構成した
E: ことを特徴とする餅。」

画像


争点の1つは、構成要件Bの
「載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に・・・」
という表現が、
「載置底面又は平坦上面には切り込み部等を設けない」意味に解釈されるべきかどうかということです。

結論として、知財高裁は、載置底面や平坦上面に切り込み部等を設けることを除外しない(設けてもよい)と判断しています。

●ものの発明はものらしく
今回の訴訟を見ると、やはり特許請求の範囲の表現は大事だなと改めて感じさせられます。

私の場合、以前勤めていた特許事務所の所長に明細書作成を教わったのですが、
その所長がしつこく言っていたのは、

ものの発明はものらしく書きなさい

ということでした。

すなわち、ものの発明は、静的な構成要素の列挙で特定するべきで、方法的(動的)に書いたり、必要な構成要素を略したりしてはいけないということです。

●不意打ちの禁止
その構成要素の列挙のしかたについて、「不意打ちの禁止」という考え方があります。

不意打ちの禁止については、こちらのサイトの「<antecedent basis>」(先行詞)という項目を参照してください。
http://www.ne.jp/asahi/patent/toyama/jitsumu/m_claim1.htm

ここに挙げられている請求項の例は、

「液体を収容可能な容器本体と、この容器本体の取手の反対側側面に設けた液体注出口とを設けた散水容器」

ですが、この「取手」はその前に記載されておらず、いきなり出てきた、不意打ちの構成要素となっています。

日本だと、こういった不意打ちの表現でも拒絶されることはないでしょうが、アメリカだと「先行詞」がないと言って拒絶されることがあります。
ただ、先行詞がなく不意に構成要素が出てきた場合、発明が不明確になる可能性があるので、そうならないように日本の特許請求の範囲の作成実務でも、先行詞を予め書いておいたほうがよい場合も多いでしょう。

ちなみに、先行詞をきちんと記載すると、上記の特許請求の範囲は、以下のように記載できるでしょう。
「液体を収容可能な容器本体と、この容器本体に設けられた取手と、前記容器本体のうち前記取手の反対側側面に設けられた液体注出口と、を備える散水容器。」(この表現にも若干違和感がありますが・・・)

●不意打ちをなくそう
今回の切餅事件でも、先行詞がなかったことが特許請求の範囲の解釈をややこしくしてしまったと考えられます。

すなわち、構成要件Bの
「載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、・・・溝部を設け、・・・」
という表現では、「載置底面」と「平坦上面」がいきなり出てきています。
このため、「載置底面又は平坦上面ではなく」が「立直側面」にかかるのか、その後に出てくる「切り込み部又は溝部を設け」にかかるのかが不明確となっています。

こういった不明確さをなくすためには、発明を特定するための事項として、

「前記焼き網に載置される載置底面と、この載置底面から垂直方向へ起立する立直側面と、この立直側面を挟んで前記載置底面と対向する位置に設けられた平坦上面と、を備え、」

といった具合に、載置底面と平坦上面を予め独立の構成要素として記載しておくとよかったのかもしれません。

そうすると、載置底面、平坦上面、立直側面がそれぞれ異なる面であることが明確となり、立直側面を規定するのに、わざわざ「載置底面又は平坦上面ではなく」と表現しなくてすみますからね。

人のふり見てわがふり直せと言いますが、こういった事例を教訓にしてスキルアップに努めてゆきたいものです。

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さて、今日はこれからたて続けに2つの研修があります。
金曜日なので明日のことを気にせず飲めるため、研修後の懇親会が楽しみです。

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